2019年9月1日日曜日

アートと地理

「アート」と「地理」


地理学の世界では、「アート活動が地域に与えた影響」「芸術による地域活性化」「アートツーリズム」といったテーマが、よく議論されています。
これについては、アートツーリズムで有名な直島や、倉庫街を"アート"を軸として再開発した天王洲アイルに行ったので、筆を改め投稿したいと思います。


こういった議論とはちょっと違う話をしてみたくなりました。

「アートは地理学や地理の対象である」という見方もできれば、
「アートと地理学は表現方法の違いである」という見方もできると思うのです。


目の前に世界が広がっています。
"世界"というと大げさですが、日常の風景、旅行に行けば美しい風景、都会や田舎、様々な景色が広がっています。

さて、その景色を見た時に、

「地図にしてみよう」といってなるべく客観的に統一の基準で2次元に記述したものが地図。
はたまた、景観や地図から何が読み取れるかを、探求していった先に地理学の研究、そして最終到達点に論文があります。

一方、世界や風景を見た時に、
「美しいから表現しよう」「美しい景観を写真に収めよう」「感じたままに表現したい」といって表現した先に、芸術があるのだと思います。
その表現は、絵画であったり、写真であったり、これまで誰も考えつかなった表現方法かもしれません。

感じたものを、客観的に記述していくか、それとも感じたままに表現していくか、全く異なる分野・領域に見えても、「世界を表現する」という方向性は一緒だと思っています。


東京都現代美術館で「ひろがる地図」という企画展が開催されています。

地図をテーマにした現代アートの企画展です。
見学者の出身地と経験をつなぐアート作品
空想地図
この企画展を見たときに、ふと、「地理とアートって根本は一緒かも」と思ったのです。
感じたものを表現しようとしたアート作品が地図と近いものや、地図を用いたものになっています。


大学生のときに「環境表現論」という講義を受講していました。
講義の趣旨は「自分の周りの景色・空間・地域(=環境)を認識して、自分なりに表現する」というものでした。
半期の授業の中で4つほどの製作課題が出され、おもしろい着眼点を持つ製作物は先生が発表する、といったものです。
講義の中では、古い物を収集して表現する考現学や、動画や写真による表現、自分の好きなものを収集して表現する例…などなど、いろいろな表現方法が紹介されていました。
環境表現論の資料
環境表現論の作品。地域の構成要素を拾う課題。
講義を聞いていた当時は「とりとめのない話でわかるようなわからないような…」と聞いていましたが、この講義こそ「空間を認知して」「空間を表現する」ことの入り口で、地理学の感性にとても近しいものだったと、今さらながら思っています。

自分のまわりの環境への感性が、学問的なものへ向かうと場合によっては地理学へ、もっと直感的な表現方法に向かうと芸術へ向かっていくのでしょう。


最近、アート作品を見ていると、なんだか親近感がわいてきます。
(あくまでも勝手に私が親近感を持っているだけです)
まだ誰も書き記していない論をまとめて世界を明らかにしたいという地理学への欲求と、世界を表現するアートとで、なんだか近い気がするのです。


特にオチはないです。
とりとめのない話をしてしまいました。

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