2019年8月18日日曜日

研究テーマを語る⑤ まとめ

8.研究で得られたこと、これから得ないといけないこと

これまでの先行研究で得られたものは何だったのだろうか。

確実に言えるのは、1980年代までの研究で、当時開通していた日本列島の背骨となる高速道路に対して研究が行われ
  • 農業・製造業・観光業の出荷額等が増加した事例
  • 時間短縮の便益により、立地が促進された事例
が多く報告されてきたということ。

一方で、その地域差、
  • いろいろな事例を見てみると、成功した事例の陰で、犠牲となった場所もある
  • 全国均一で恩恵を享受したわけではない
ということは、まだ明確に示されていない。この点が今後の研究に望まれる点。



9.研究の方策

ストック効果、フロー効果、合意形成、その他の着眼点と、4点にわたって研究の視点を見てきました。

ストック効果を検証するのであれば、農業生産・工業生産・サービス業などの各指標と高速道路との関係を、GISで分析するのが最初の一歩だと思っています。
(もうすでに先行研究ではされていますが、地域を限定した分析や、路線単位での分析が多いので、全国的・市町村単位での統計を用いて分析できないか検討中です。)
その上で、期待していた効果がその通り得られたのか、自治体にアンケートをしたり、代表的な事例を現地で調査したりするのが、地理学でのベターな調査になるかと考えています。

フロー効果と合意形成については、ゼロからストーリーを考えなくてはなりません。
ストック効果を考えながら、頭の片隅で考えることになるかなぁ~なんて思っています。


10.近年の研究をふまえて

研究の流れで解説しましたが、高速道路に関する地理学の研究は、1990年代で高速道路に関する地理学の研究は、ほぼほぼ終焉します。近年では高速道路に焦点をあてた研究は皆無です。
1990年代は、日本の背骨となる高速道路が完成した時期です。
一方で、肋骨にあたる地方の高速道路はその後に建設が進みました。
また近年では新直轄方式(※)の高規格道路や、スマートインターチェンジの建設が進んでいます。
※新直轄方式:簡単に言うと、税金を投入する代わりに無料で通れる高規格道路のこと。

また、
  • 事業主体の民営化
  • 高速バスの発展
  • 休憩施設と地域との連携
こんなことも注目されています。

こうした高速道路の変化を振り返る時期に差し掛かっていると思います。

最近では青森大学の櫛引先生(→リサーチマップへのリンク)が継続的に新幹線について研究発表をされています。
櫛引先生の研究では、新幹線開通が地域に与えたものは何だったのか、新幹線は地域の期待に応えうるものだったのか、新幹線への賛否は…と総合的に新幹線への評価が考察されています。
高速道路は新幹線と共に、地域の交通を大きく変えたインフラです。
櫛引先生の研究を参考にして、高速道路の研究も一歩前へ進めたいところです。


――――――――――――――――――
学会等での挨拶などでヒントをくださった先生方、水産業についてアドバイスをくれた高校の同級生、農作物流通についての書籍を紹介してくれた高校の同級生、京都丹波道の資料を頂いた方、みなさま、ありがとうございました。この場を借りて御礼申し上げます。

なお、ブログに記載の内容は全て、学術研究の一環として、個人的に課題意識をもって勉強してきた内容で、特定の機関の意見等ではございませんので、誤解のないようにお願いいたします。
本記事の内容を使用する際にはご一報ください。
(令和元年12月1日)

0 件のコメント:

コメントを投稿