2020年1月26日日曜日

千葉市緑区のニュータウンをめぐる

日本では、高度経済成長期以降、大都市の過密化により、郊外に多くのニュータウンが造成されました。
郊外化を問うたセンター試験問題
正解は⑤番

それらニュータウンは高度経済成長が終わり、バブル経済も終わった現在、どうなっているのでしょうか。
多くのニュータウンが造成された千葉県千葉市緑区のニュータウンを観察したいと思います。

千葉県千葉市緑区には個性のあるニュータウンが並んでいます。
それぞれ、どんな特徴があるのか見てみます。



千葉市緑区の概要

千葉市緑区はJR外房線沿線を中心とする千葉市の区です。
JR外房線沿線には多くのニュータウンが存在していて、千葉市緑区の多くはニュータウンによって成り立っています。

千葉県の郊外化

橋詰ほか(1999)から千葉県の郊外化を概観します。

  • 高度経済成長期以降、千葉県における都市化が大きく進展。
  • 1955-60年:千葉県人口増加率4.5% → 1960-65年:17.3%
    • …東京に近接する千葉・東葛地区での人口増加
  • 1965-70年:千葉県人口増加率24.6% → 1970-75年:23.2%
    • 人口増加地域の外縁化・広域化 : 八千代市・我孫子市など
  • 1975-80年:千葉県人口増加率14.1% → 1980-85年:8.7%
    • 都市化前線は印西町・山武町・八街市へ
    • 千葉市緑区のニュータウンもこの時期に造成されました。

千葉県最大規模の千葉ニュータウンや、日本最大の多摩ニュータウンは1960年代から事業が開始され、1970年代から入居が始まりましたが、千葉市緑区のニュータウンはそれから10年遅れくらいで開発・まちびらきされました。


現在の65歳以上人口割合を見てみると、大規模なニュータウンとして開発された地域だけが、65歳以上人口割合が小さいことがわかります。
あすみが丘ニュータウンやおゆみ野ニュータウンでは65歳以上人口が1ケタの地区もあり、現在でも若い世代が流入しているのではと考えられます。


おゆみ野

京成千原線の学園前駅・おゆみ野、外房線の鎌取駅に囲まれたニュータウン。
千葉県で千葉ニュータウンに次ぐ規模のニュータウンです。
日本住宅公団(現:UR)が整備しまし、1984年にまちびらきしました。
おゆみ野ニュータウン

名前の由来は「生実(おゆみ)」という地名から。


鎌取駅前には千葉市緑区役所があり、図書館・文化ホール、イオン(元:ジャスコ)が立地。
緑区の中心地となっています。

おゆみ野ニュータウン・ちはら台ニュータウンの開発を見込んで、京成千原線(当時は千葉急行)が開業しましたが、運賃の高さ、直通する京成千葉線の不便さから、利用客は少ないままです。
一方で、JR外房線の利用客は多く、鎌取駅では始発から満員電車になるとか。
7:38に鎌取駅を出発する電車は、東京駅まで直通で8:35に到着。東京まで47分。


  • 施工面積605ha
  • 事業開始1977年
  • 計画戸数22720戸
  • 計画人口80000人









(おゆみ野ニュータウンの特徴)
千葉市緑区の中心地であり、商業施設も多く、緑区役所や文化センターも立地。
URが整備した千葉県最大級のニュータウンで、鉄道駅3駅に囲まれている。
千葉市に近く、東京へも乗車時間1時間以内で到達可能であるため、今後の成長も見込まれる。

ちはら台

千葉市と市原市にまたがるニュータウンであり、「千」葉市・市「原」市の文字を取ったのが名前の由来。

  • 施工面積368.9ha
  • 事業開始年度1977年
  • 計画戸数12180戸
  • 計画人口50000人

ちはら台ニュータウン


(ちはら台ニュータウンの特徴)
千葉県最大級のおゆみ野ニュータウンと一体的に開発されたニュータウンであり、URが整備ししたため大規模。
駅から離れている地区も多く、現在は高齢化率も低いが、十年後二十年後が正念場だろう。


誉田駅周辺

誉田駅の南側

誉田駅の南側には土気往還が通っており、古くから街道の町として発展していました。
ですので、誉田駅の南口には、古い区割りが残っています。

新築された誉田駅舎

たかだの森


誉田駅の南口とは対照的に、北口では住宅地の造成が進行中で、新たに作られた幅の広い道路が通っています。
現在、誉田駅の北口から1kmちょっとの場所に、たかだの森ニュータウンが造成中です。
誉田駅周辺
すでにいくつかの区画には新築の家が建ち、人が住み始めています。






(たかだの森ニュータウンの特徴)
開発が現在進行中であるニュータウン。
現在は商業施設がニュータウン内になかったりと、不便に感じるところがあるが、今後の開発の行方が気になる。


越智のニュータウン開発

越智町に開発されたニュータウンは、外房線に新駅ができると見込んで開発された。
しかし、外房線の新駅開業は叶わず。
民間によるニュータウン開発です。
車かバスで誉田駅まで出る必要があります。
ほかのニュータウンに比べて高齢化が進行しています。


  • 施工面積53.8ha
  • 事業開始1977年
  • 計画戸数1182戸
  • 計画人口4720人









(越智町のニュータウンの特徴)
駅から遠く、利便性に劣るためか、高齢化が進んでいる。


土気のニュータウン

土気駅周辺のあすみが丘ニュータウンは、東急不動産によって開発されました。
(なお、組合方式で、多摩田園都市開発と同様の手法です。)
あすみが丘ニュータウン
大手不動産会社の開発と言うこともあってか、道幅はおゆみ野などに比べて広くて、街路樹も綺麗です。


  • 施工面積313.6ha
  • 事業開始1982年
  • 計画戸数9560戸
  • 計画人口30600人

土気駅南口

土気駅北口




あすみが丘ニュータウンの特徴として、「ワンハンドレッド・ヒルズ」(通称:チバリーヒルズ)と言われる、高級住宅地があります。
このチバリーヒルズの入り口にはゲートがあり「関係者以外立ち入り禁止」の文字が。
いわゆるゲーティッド・コミュニティです。
チバリーヒルズ入り口のゲート



(あすみが丘ニュータウンの特徴)
不動産開発のノウハウを持つ不動産会社が開発したニュータウン。
街並みも綺麗に整えられ、高級住宅街も有する。


まとめ

千葉県千葉市緑区の外房線沿線にはニュータウンが並んでいます。
それぞれのニュータウンは開発時期の違い、開発主体の違いにより、ちょっとずつ異なる様子が見てとれる、面白いフィールドです。

東京から1時間とはいえ、遠い位置であることから、ニュータウンの開発は多摩ニュータウン・千葉ニュータウンなどの10年ほど後となりました。
ゆくゆくは人口減少社会・高齢化社会の様相が顕著に表れてくると考えられます。
ニュータウンの将来はどうなるのでしょうか。


1 件のコメント:

  1. とても面白い記事でした。土気駅は反対側の住宅地がどうなっているか興味が湧いてきました。大網白里市はコロナ中に移住者が増え、その後の状況も興味が出てきました。訪れてみようと思います

    返信削除