紹介する商店街は麻布十番商店街です!
近くには多くの大使館や、六本木ヒルズなどがあります。
渋谷川の支流が、武蔵野台地下末吉面(淀橋台)に切り込んだ谷です。
時代はくだり、関東大震災以降には、都電の電停周辺が発展し神楽坂・浅草に並ぶほどの歓楽街となりました。
それは、地下鉄の開業です。
1961年に地下鉄日比谷線が開通し、その代わりに1969年には都電が廃止されました。
麻布十番地域は、「客が地下鉄で流出してしまう」と懸念して、地下鉄開業に反対しました。
その結果、日比谷線は六本木経由となり、麻布十番地域を迂回しました。
このことにより、麻布十番地域は「陸の孤島」と言われる地域となり、周辺と比べて衰退しました。
ただし、一方で「車でしか行けない裏路地」というプレミアム感も醸成されたといいます。また、バブル経済期に中心地とならなかったおかげか、老舗が多く残り、商店街主導の街区整理も行われました。
2000年に地下鉄南北線・大江戸線が開業そ、2003年に六本木ヒルズが開業しました。
この、大型商業施設の開業と、交通利便性の向上により、麻布十番商店街は大きく変化をしました。
①店舗数が増加
白田ほか(2012)では、以下のような個々の商店の対応が報告されています。
①後継者がいる店舗
②後継者がいない店舗
このように、麻布十番商店街は時代の変化、周辺環境・立地条件の変化によって、大きく変化してきた商店街です。
そのような雰囲気が、後々の地下鉄開業・六本木ヒルズ開業を契機として、人気の商店街となる要素になりました。
地価が安かったからこそファッション店が集まったウラハラ…などなどと似たような(?)要素を感じます。
既存の住民の買い出しの場、という機能が失われた商店街が、衰退していくのか、観光客向けの商店街として変質して維持されるのか、この分岐点をうまく切り抜けたのが麻布十番商店街と言えるでしょう。
六本木ヒルズと、麻布十番商店街とで、地域を共に盛り上げるように協力しているといいます。
高級店が入る六本木ヒルズと、下町のような雰囲気も残る麻布十番商店街とで、いい具合に棲み分け・機能分化ができているのでしょう。
大型店への反対運動も起こりがちな商店街ですが、麻布十番商店街は興味深い事例です。
慶應義塾大学商学部牛島利明研究会第10 期生「商店街における店舗増加の要因分析 ~麻布十番商店街の特異性とその影響~」
(記事の日付は2019年11月24日にしましたが、2020年1月5日に投稿しました)
麻布十番商店街の概用
麻布十番商店街は東京都心付近、港区に存在する商店街です。近くには多くの大使館や、六本木ヒルズなどがあります。
麻布十番商店街の位置 |
麻布十番の地形
麻布十番商店街が位置する場所は、台地のなかの谷底になっています。渋谷川の支流が、武蔵野台地下末吉面(淀橋台)に切り込んだ谷です。
麻布十番商店街の歴史 江戸時代からの発展
麻布十番は、江戸時代には門前町として発展していました。時代はくだり、関東大震災以降には、都電の電停周辺が発展し神楽坂・浅草に並ぶほどの歓楽街となりました。
地下鉄が通らなかった
都心郊外の歓楽地として発展していた麻布十番ですが、転機が訪れます。それは、地下鉄の開業です。
1961年に地下鉄日比谷線が開通し、その代わりに1969年には都電が廃止されました。
麻布十番地域は、「客が地下鉄で流出してしまう」と懸念して、地下鉄開業に反対しました。
その結果、日比谷線は六本木経由となり、麻布十番地域を迂回しました。
日比谷線に迂回された麻布十番 後にできる南北線・大江戸線 |
ただし、一方で「車でしか行けない裏路地」というプレミアム感も醸成されたといいます。また、バブル経済期に中心地とならなかったおかげか、老舗が多く残り、商店街主導の街区整理も行われました。
1980年代に完成した広場 パティオ十番 イベントが行われたりする |
麻布十番商店街の転機
そんな麻布十番地域に第2の転機が訪れます。2000年に地下鉄南北線・大江戸線が開業そ、2003年に六本木ヒルズが開業しました。
この、大型商業施設の開業と、交通利便性の向上により、麻布十番商店街は大きく変化をしました。
商店街の変質
麻布十番商店街は大きな変質をしました。①店舗数が増加
- それまでの「庶民の町」としての、家族経営店舗は減少する一方で、チェーン店・独立開業が増加
- 再開発で既存の住民が転居する一方で、再開発された高級マンションの住民は商店街で買い物をしない
- 代わりに六本木ヒルズ開業により女性観光客が増加
白田ほか(2012)では、以下のような個々の商店の対応が報告されています。
①後継者がいる店舗
- 客層の変化に対応
- 観光客増加→土産物の取り扱いを始める
- 女性客増加→女性向け商品
- 人通り増加→パフォーマンス・実演販売
- もともと売っているものが観光客にも売れる商品だったお店
- 和菓子etc.…食べ歩きなど観光客向けにさらに特化
②後継者がいない店舗
- 客層に対応する気力は無く閉店へ
- 賃貸にした方が楽で儲かる
このように、麻布十番商店街は時代の変化、周辺環境・立地条件の変化によって、大きく変化してきた商店街です。
まとめ
私が注目する点は以下の点です①「陸の孤島」ゆえの、その後の商店街の発展
麻布十番は「陸の孤島」といわれたような、交通利便性が悪かった地域であったからこそ、古くからの老舗や、路地裏の雰囲気が残された地域でした。そのような雰囲気が、後々の地下鉄開業・六本木ヒルズ開業を契機として、人気の商店街となる要素になりました。
地価が安かったからこそファッション店が集まったウラハラ…などなどと似たような(?)要素を感じます。
②商店街の変質
ほかの商店街と同様に、麻布十番商店街も既存の住民の「生活の場」としての機能は失われてきました。既存の住民の買い出しの場、という機能が失われた商店街が、衰退していくのか、観光客向けの商店街として変質して維持されるのか、この分岐点をうまく切り抜けたのが麻布十番商店街と言えるでしょう。
③大型商業施設との共存
商店街のすぐ近くに六本木ヒルズができたにも関わらず、元気な商店街となっています。六本木ヒルズと、麻布十番商店街とで、地域を共に盛り上げるように協力しているといいます。
高級店が入る六本木ヒルズと、下町のような雰囲気も残る麻布十番商店街とで、いい具合に棲み分け・機能分化ができているのでしょう。
道の向こうに見えるのは六本木ヒルズ |
大型店への反対運動も起こりがちな商店街ですが、麻布十番商店街は興味深い事例です。
参考文献
白田順士・大村健二郎・藤井さやか 2012. 東京都心商店街における家族経営型店舗の都市環境変化への対応に関する研究―麻布十番商店街を事例として―. 公益財団法人日本都市計画学会,都市計画論文集:vol.47:No.3,2012.10慶應義塾大学商学部牛島利明研究会第10 期生「商店街における店舗増加の要因分析 ~麻布十番商店街の特異性とその影響~」
(記事の日付は2019年11月24日にしましたが、2020年1月5日に投稿しました)
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