2019年3月31日日曜日

私なりの「巡検」論

たまーにTwitter上で論戦を目にします。
(それほど論戦では無いかもしれませんが…それはさておき。)

その論戦とは何か。
「『巡検』とは何か」です。

ネット辞書で検索すると
じゅんけん【巡検】
( 名 ) スル
いろいろな所を調べて回ること。巡察。
と出てきました。なるほど、全くピンとこないですね。

(地理学の)巡検は簡単に言ってしまえば「まち歩き」です。

多くの場合、案内人が数名~数十名を案内してまわります。
交通手段は、徒歩だけだったり、電車を使ったり、バスを貸し切ったりと多様です。
案内人が事前にルートや見所をまとめて、レジュメ・資料を用意しておく場合が多いです。
見学場所・見どころで案内人が地理学的視点から解説を行います。
巡検で学ぶテーマが決まっているのが一般的…かな?

この「巡検」というワードは地理学界隈にいるとよく使います。
しかし、この「巡検」を使うのは、地理学分野と地学分野に限られるようです。
逆に地理学分野・地学分野では、ちょっとしたお散歩も「巡検」と言ったり、一人で旅行するのを「一人巡検」などと言ってみたり、わりと見境なく使っています。

このブログでは、巡検スポットを紹介していこうと思っているのですが、そもそも「巡検」とは何なのでしょうか。

あくまで私の意見ですが…
私は、巡検とは「地理学の理論を現場で確認して学ぶ作業」だと考えています。

地理学ではこれまでに多くの論文が書かれ、様々な理論・仮説が提唱されてきました。
それを、現場に行って確かめてくるのが巡検だと考えています。

例えば、都市地理学の分野では、高度経済成長期の郊外化から、バブル崩壊後の都心回帰に至るまでの経緯が多く記されてきました。それを、実際に、ニュータウンだったり森ビルだったりに行って、学ぶのが巡検だと思うのです。
文化地理学では、異文化の中におかれたマイノリティの人々が、異文化の中で自分たちの文化を維持し、ときに異文化に溶け込むための戦略が研究されてきました。実際に、中華街・新大久保・池袋へ行って、その戦略を体験して学ぶのが巡検だと思います。
経済地理学では、大量生産・大量消費の時代が終わり、「ほしい物を、ほしい時に、ほしいだけ」というJIT物流が構築されるまでの経緯が検討されてきました。それをふまえて、実際にコンビニ・イオン・商店街に行って、JITを感じるのが巡検だと思います。
地形学では、地形の成り立ちが研究され、基本的な法則があります。現場に行って、現地で崖をよじ登ることで、地形の成り立ちを学ぶのです。

地理学は「現場(フィールド)で何が起きているのか」を重視します。
学んだことが、机上の空論、ただの理論にならないためにも、理論を現場で確認する巡検は重要なツールです。

ですので、ただ何となく街を見てまわるのは、厳密に言えば巡検ではないかな…と思っています。
「ここに東京タワーがあります」「これが○○ビルです」と言うだけではなく、「こういう時代の変化によって、この建物がここに建てられました」「こういう成り立ちがあります」とまで言わなきゃ、巡検の醍醐味が無いんじゃないかな…。

これが私なりの巡検論です。
このブログでは、「地理学ではこういうことが言われていて…、ここに行ったら地理学で言われているこれがわかるんだよ」というのを紹介していければなと思います。

年度末で忙しくて、巡検スポットの紹介ができませんでした。
つまらない長文ですみません・・・。
次回は、巡検スポットを紹介したいと思います。では。

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