2020年3月8日日曜日

沖永良部をめぐる①

2020年3月5日から8日まで、3泊4日で鹿児島県の沖永良部島を旅行してきたので、旅行の思い出を振り返ります。

まずは、沖永良部の概要と、地形・自然から。


沖永良部島とは

沖永良部島は鹿児島空港から南西へ520km、那覇空港から北東へ170kmの場所に浮かぶ、鹿児島県の島です。
沖永良部島はここ
奄美大島から連なる奄美群島に属します。
本州から見ると、沖縄本島の2つ手前の島です。



島民は沖永良部島のことを「えらぶ」と呼んでいました。

沖永良部島には知名町と和泊町の2町があり、約1万3千人が住んでいます。

こんな形の島です
越山展望台から国頭方面を望む
大山展望台から越山を望む
和泊港
農業が盛んな様子がわかる




沖永良部島へのアクセス

沖永良部島へのアクセスは飛行機かフェリーの2択です。


飛行機はJAC(Japan Air Commuter)のプロペラ機が飛んでいます。
鹿児島・那覇・奄美大島から就航。
今回の航空券は羽田から往復5万円でした。
鹿児島空港にて
沖永良部空港にて
往路と復路で違う期待だった
復路の機体は胴体が短くてずんぐりしていてかわいかった


フェリーだと鹿児島から18時間、那覇から7時間かかります。
フェリーは島民の物資も運ぶ生命線

沖永良部島の地形と自然

隆起した海岸

《南の島》と聞くと《白い砂浜》を想像しがちですが、沖永良部の多くは岩石海岸で、岩石海岸独特の地形が見られます。

田皆岬からの景色
断崖絶壁の海岸が続く
段丘地形も観察できる
田皆岬から海を見る

断崖絶壁

半崎からの景色

半崎にある「軍艦岩」
米軍が軍艦だと思って爆撃した
という逸話が残る岩

半崎からの景色

「フーチャ」いわゆる潮吹き岩
もともと島に3つほどあったようだが、
塩害対策のためこのフーチャしか残っていないそうだ
ウジジ浜の岩石
波の侵食がよくわかる奇岩

ただし、断崖絶壁や岩石海岸ばかりというと、絶壁の岬と岬に囲まれた場所にポケットビーチが点在していて、綺麗な砂浜もあります。
沖永良部島 最北端の海
仲泊海浜公園
砂浜が広がる
笠石海浜公園
島では珍しい広い砂浜

笠石海浜公園
海は澄んでいて綺麗

その砂浜もちょっとゴツゴツしていますが…(笑)


ビーチロックという海岸地形も見られます。
(今回の旅行では行きそびれましたが…)
「炭酸カルシウムのセメント作用で、海浜堆積物が凝固してできた板状の石灰質の砂礫岩」だそうです。
→「ビーチロックとその類似地形


岩場にはたくさんの魚が泳いでいて…
ハリセンボンかわいかった
残念ながら一匹も釣れなかったけど
お日様の下で釣りをするの最高
釣りには最高の島かも(笑)

◆漁港の朝
南のお魚が泳いでいて、漁港の競りにはいろいろな魚が並ぶ。
和泊漁港の朝
なお、この日は不調だった
前日よりはにぎやかだった旅行2日目の漁港
うまそう
漁港の競りは朝9時前。
島内のスーパーが魚を買い付けて、その魚が夕方には鮮魚コーナーに並ぶ。
最強のトレーサビリティ。

◆ウミガメ
港でウミガメ が何匹も泳いでいて、ちょっと驚き。
こんなに身近な生き物だったんだ…。

◆クジラ
海岸からクジラが見えた。
海岸から見えたクジラ
クジラが見えるのは珍しいそうだ
ホエールウォッチングツアーもあるみたい。


段丘の地形

沖永良部では段丘が発達している。
あまり段丘らしさを写真では撮れなかったので、論文から引用する。


東京周辺で言う 多摩丘陵、武蔵野台地、現在の層、
それぞれの海水面変動に対応した段丘になっているとのこと
地質図…というより段丘区分
ちょっと古い区分図
横断図

地下水脈


論文では
  • ① 花崗閃緑岩 → 基盤岩に花崗岩が貫入したもの 新生代古第三紀
  • ② 根折層 → 150~200m以上の山地 先第三紀の古生層という基盤岩 四万十層群の一つ
  • ③ 下城層 → 150~200mの段丘 九戸段丘 ギュンツ―ミンデル間氷期
  • ④ 新城層 → 70~150mの段丘 多摩段丘 ミンデル―リス間氷期
  • ⑤ 瀬利覚層 → 40~80mの段丘 下末吉面 リス―ウルム間氷期
  • ⑥ 40~50mの段丘 → 武蔵野・立川面
  • ⑦ 低地
  • ⑧ 現在のサンゴ礁
こんな具合で、段丘(地質)が区分されている

③は琉球層群の下部層と言われ、サンゴや石灰藻からなる生砕屑岩を主体とする礁相とその外洋側に石灰藻球石灰岩や石灰砂礫岩の周縁相からなる。
④⑤は琉球層群の上部層と言われ、石灰藻~サンゴ生砕屑岩・石灰岩礫岩・陸源砂礫層によって構成される地層。

越山は貫入した花崗岩によってできた丘陵といったところだろうか

基盤岩である根折層の上に、サンゴ礁由来の琉球層群が載っていると理解すればよい。
根折層は水を通さないため、琉球層群に染みた雨水は、根折層の上を流れているようだ。

段丘崖に鍾乳洞の横穴が空いていて、湧き水が湧いているようで、そこに集落が並んでいるとの記述もある。

【参考文献】
1 奄美の気象と海象』 (鹿児島県)
沖永良部島』 (日本地下水学会)


カルスト地形

沖永良部島では、サンゴ礁由来の石灰岩地形が見られる。
本州の付加体由来の石灰岩とはちょっと違います。
地形図からわかる見事なカルスト地形

◆昇龍洞
これまでに見てきた鍾乳洞より長くて、良い意味であまり手が加えられていなくてよかった。
昇龍洞
昇龍洞

地形と生活

◆川と溜池
石灰岩地形のため川はすぐに地下へもぐる。
海までつながっていない川
「海まで繋がっている川はあっちにある1本だけだよ」
これでも島内では珍しい立派な川

そのため、溜池がたくさんある。
国頭にある溜池は奄美群島最大だとか。
奄美群島最大の溜池、耳付池


◆クラゴー
水が湧く窪地(鍾乳洞)「クラゴー(暗川)」は生活の要所だった。
女性や子供が水を汲んで上がっていたそうだ。
深いクラゴーに頼る集落には「嫁に出すな」と言われていた時代もあるようだ。
国頭の暗川
住吉暗川
住吉暗川の中


◆湧水の恵み
沖永良部島ではあちこちで湧水が湧く。
石灰岩地形で、水が地下へもぐる分、湧き水も多いみたい。
→『沖永良部島における湧水地調査プロジェクト

「瀬利覚の川」を意味するジッキョヌホーは集落の中心にあった湧水で名水百選になっている
ジッキョヌホー

ジッキョヌホー

シャ川
知名漁港の脇にある湧水
シャ川は災害時にも生活を支えてきた湧き水



◆地下ダム
水が地下へ潜るため、地下ダムが建設中である。
地下ダムの建設現場
大成建設と清水建設が作っているようだ
たくさんの車が止まっていてプロジェクトの大きさが感じられた


気候

沖永良部の気候は温暖で、冬でも扇風機を出すらしい
夏は海に囲まれているので、灼熱、とまではいかないようだ。

1975年の沖永良部台風では大きな被害を受けた。
電柱は台風にも耐えるためか斜めの支えがついているのが東日本との違い。


(次回へ続く… 次回「沖永良部の農業、食、歴史文化」)

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